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君と私と(非)日常

第27章 益体もない裁判


『わかった。……まず、イズルくんの部屋に入って30分は雑談しかしなかったの。でもイズルくんがすぐに会話を終わらせようとするから、何か良い話題はないかなって思って「才能を見せて」ってお願いしたんだ。』
カムクラの鬱陶しそうな表情を思い出すと、目頭が熱くなる。ただ好きで好きで堪らなかっただけなのに、ただ他愛もなく過ごしたかっただけなのに……どうしてあんなことに。
悔やんでも悔やみきれないと、希灯は痛くなるほど拳を強く握り締めた。
『才能を見せるって言っても題材がないと成り立たないから、何をさせるか考えることにしたの。でもなかなか思い付かなくて……。そんな時、隣の部屋の人の呻き声が聴こえたんだ。』
「呻き声……?」
『そう。くぐもった男の声で「出る……!」って感じのことを言いながら暫く呻いてた。私はそれが何なのか分からなかったからイズルくんに隣の部屋の人が何をしているのか質問したの。そしたらあれはオナニーだって言うから……超高校級の希望がどんな風に自身を慰めるのか見たくなっちゃって必死にお願いしたんだ。2時間くらい粘ったら諦めてやってくれたよ。』
鬱陶しいに鬱陶しいを重ねたストレスフル過ぎる現場を想像しながら一同は希灯の言葉を聴いていた。
そんな中、花村が挙手をする。
「はいっ、質問。超高校級の希望であるカムクライズルくんの一人遊びは、一体どんなシコシコビンビンパラダイスだったのかな?」
『…………。』
「ちょっと花村……あんた何てこと聞くのよ」
常日頃から料理と性に情熱を注いでいる花村が憚らずに訊くのを、小泉が信じられないといった調子で止めようとする。
『………無理だよ。体勢も、動きも、吐息すらも……言葉で表現するのが烏滸がましく感じる程、イズルくんの才能は神秘的だった。あのままの姿を彫刻にしても何も問題ないくらいだよ。死んじゃった時はすごく無惨だったけど……。』
見てるだけでも妊娠しそうな気がした、と希灯が零すのを花村が心底羨ましそうな顔で聞いていた。
「希灯さん、事件の話を続けて」
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