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君と私と(非)日常

第27章 益体もない裁判


『だって、最初はただ気絶しただけなのかと思ってたし……こんなの人に見せたらどうなるのか分からなかった。それから不安で仕方なくなって罪木さんを呼んだら、罪木さんが部屋を見た瞬間に叫んじゃって、その声で皆が駆け付けたの。』
「クロの疑いがある希灯を弐大と辺古山が拘束して、カムクラを罪木と東条が介抱して……ほんの数分の出来事にも関わらず、とても慌ただしいものだった。まさかこんなお粗末な殺人でここに立つことになるとは思いもしなかったぞ」
既に希灯を犯人だと決めつけた痩せた方の十神が冷たい口調で言う。
「それ以前に、君達のやったことは不純異性交遊ではないか……どんな形であれ秩序を乱すのは許せない! 希灯君、学級裁判が終わったら直ちに反省文を書くべきだ!」
「いや、別にそんなの書かせる必要ないんじゃない?」
円卓に頬杖を突きながら王馬が石丸に言う。
「なっ……しかしそれ相応の処罰はしないとふしだらな問題が横行することになるぞ!」
「だってさぁ、希灯ちゃんが犯人なら学級裁判が終わる頃にはもう死んでることになるじゃん。だからどうやっても書かせることが出来なくなっちゃうんだよ」
「はっ……確かにそうだな!」
王馬の言葉に石丸はショックを受けたような反応を示した。
「ちょっと待って……本当に犯人は誉稀ちゃんでいいの?」
「何じゃあ? そんなこと希灯が自分から自白したじゃろう」
「それはただ責任を感じて言ってるだけなのかもしれないじゃない。実際、カムクラは自分一人で最初から最後まで済ませたんでしょ?」
小泉が希灯に確認も含め問い掛ける。
『うん……イズルくんが触っちゃ駄目って言ったから、私はただ見てるだけだったよ。』
カムクラから「指一本触れるな」と言われた束の間の戯れを思い出し、希灯は顔に風呂敷を押し当てる。肩を震わせながら必死に漏れる嗚咽を抑えようとしていた。
「話では希灯は手を出さずにカムクラが勝手に死んだことになるけど……これじゃあ希灯が犯人だとは言い切れないんじゃない? どうやってクロを決めるの?」
春川魔姫が希灯を見やりながら皆に訊く。
「行為を促した方と、自らの手で命を絶った方……罪が深いのはどちらなのだろうか」
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