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君と私と(非)日常

第26章 乙女っていいよね


『次はリンス。今度はシャンプーと違って、あんまり頭皮に付けない方がいいと思う。毛先を中心に付けようね。』
コンディショナーやトリートメントは学園にはない。
まぁ特に気合いを入れて誰かに髪を見せたいという訳でもないから、困りはしないんだけどね。
『髪のケアに使う液の種類によってはすぐに洗い流さずに数分置いたりもするんだけど、リンスは長くても30秒くらいで十分だよ。』
絡まりそうな毛先に重点的にリンスを馴染ませる。
『流すよー。次は体を洗うから、ボディタオルにボディソープを付けて泡立てといてね。』
リンスを流し、手触りのよくなった髪を手櫛で鋤く。
流し終わってシャワーを止めると、冬子ちゃんは泡立てたボディタオルで自分の体を洗い始めた。
『あっ、ダメだよ私がやる。そんなに強くしたら肌が傷付くから優しくね。』
「アンタに全身隈無く洗ってもらうなんて御免だわ。まるで介護みたいじゃない……」
そう言えばそうだ。あんまりお風呂に入らないと云えど、高校生にもなって同い年に全身の世話を任せるなんて、される側としては恥ずかしいことなのかもしれない。肌より先に冬子ちゃんなりのプライドが傷付き始めている。
『うーん……じゃあ、腐川さんは洗顔をしようか。今日は私のを貸してあげるね。』
前に倉庫から見つけ出した洗顔料と泡立てネットを冬子ちゃんに渡し、使い方を説明した。
これならどんなに力を入れても、触れるのは皮膚と泡だけだから顔に傷は入らないだろう。
冬子ちゃんからボディタオルを受け取り、手足から洗っていった。
『じゃあ、流すね。顔の泡はぬるま湯で落とそうか。』
洗面器に水に近い温度のお湯を張る。
『はい、これで洗ってねー。』
冬子ちゃんが自分で顔を洗っている間に、私は体の泡を流した。
分かりやすく垢が落ちていく。何日も入らなかったらこんなに溜まるんだな……。
『終わったよ。じゃあ仕上げに湯船に浸かるために髪を束ねようか。』
そう言って冬子ちゃんの髪を掻き上げると、鏡に顔中赤い線の入った冬子ちゃんが映った。
『うわ……っ。どうしたのそれ?。』
「手にペンダコが出来てたのを忘れてたわ……」
盲点だった。冬子ちゃんは暇さえあれば日夜部屋に籠って執筆し続けるような文学少女だったっけ。
『……まぁこれならお風呂から上がる頃には薄くなってるかな。取り合えず髪を結ぶね。』
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