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君と私と(非)日常

第26章 乙女っていいよね


「嘘おっしゃい、油断させて無防備で丸腰なあたしに手を掛けるんでしょ! それで全裸のままで大浴場で放っておかれて……それを白夜様が発見して、冷たくなったあたしの青白い肌に……!」
途中からハァハァと息を荒く吐き出しながら冬子ちゃんは己の体を抱き締める。
鏡に写ったニヤケ顔から目を反らしながら私は冬子ちゃんの髪に絡み付いているショボくれた泡にぬるま湯をかけた。
泡立ちが悪いのは、頭皮や髪が汚れているからだ。まずは皮脂をどうにかしなければ。
『シャンプーはね、髪というよりは頭の皮膚の汚れを落とす感じで洗うんだよ。爪を立てずに指の腹で頭全体をマッサージするようにね。』
ボトルから2プッシュ程出してシャンプーの液を追加する。泡立てずに頭皮に乗せたら洗い流しにくくなるから、手で少し空気を含ませ泡立ててから頭部に馴染ませた。
脂でテカテカベタベタの髪は濡らしたくらいじゃ治まらない。
手に付いた慣れない不快感を少し気にしながら揉み洗いする。
「他人から洗われるなんて落ち着かないことだわ……産湯以来よ」
『まさか食事だけでなくお風呂までワンマンだとは。1周廻って逞しいねぇ。』
育った環境を知る度に驚かされる。冬子ちゃんがふとした瞬間にほんの少し呟くだけだから詳しいことは分からないけど。
寂しい人生だとは思うものの、その陰に想像もつかないような壮絶な背景があるような気がしてならない。
気にはなるけど、どのみち暗い話になることは明白だから私は本人が教えてくれるまでは触れないことにしている。
『一旦流すよ。目を瞑っててね。』
ボリュームの少ない泡を念入りに流す。
よし、これなら次はちゃんと泡立つだろう。
『第2陣いくよー。』
シャンプーを適量出して同じように頭皮をマッサージする。
「ちょ……ちょっと、シャンプーならさっきやったじゃない」
『場合によっては2回目をした方がいいんだよ。やり過ぎたら逆に頭皮や髪を痛めちゃうから、毎日複数回やるのはオススメしないけどね。』
今度は順調に綺麗な泡が出来ていた。長い髪の根元から毛先まで泡で残さず洗っていく。
『はい、流すよー。』
先程と同じく念入りに泡を流す。
最初の皮脂のベタベタはもうすっかり無くなっていた。
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