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君と私と(非)日常

第26章 乙女っていいよね


『あー、珍しい先客だ。』
大浴場の脱衣場の扉を開けると、服を畳んでロッカーに入れている冬子ちゃんが居た。
「何よアンタ……あたしが風呂に入ったら湯船が汚れるから先に入られたくないとか絶対思ってるんでしょ」
『絶対ではないよー。』
「ほらっ、やっぱり思ってんじゃないのよ!」
へらっと笑いながら答えると、冬子ちゃんは怒った様子で私を指差す。
『腐川さんでなくても、お風呂は入ったら汚れるものだからねー。』
冬子ちゃんを「冬子ちゃん」って呼んだら怒るから、仕方なく名字で呼んでいる。「腐川」よりも「冬子」の方が可愛いのにもったいない。
『どうして今日はお風呂に入ろうと思ったの?。』
「理由なんてアンタには関係ないじゃない……」
拒む様子を見せながらも、冬子ちゃんは嬉しそうに口を歪めて頬を赤らめた。
「びゃ……百夜様に臭いから風呂に入ってこいって言われたから……」
『なんだぁ、十神くんの命令か。』
服を脱ぎながら、いつも通りだなと思う。冬子ちゃんの行動は全部十神くんが影響していると言っても過ぎた表現にはならない。十神原理主義って呼ばれてる。
『お風呂に入るの久し振りだよね、今まではどうだったの?。』
「いつもは「出ていけ」の一言だったのよ。だけど今日は「風呂に入れ」って……これがどれだけの進歩かアンタに理解出来るのかしら」
扱いが大分良くなってるわ~! 「先にシャワー浴びてこいよ」みたいだわ~! って嬉しそうに妄想に浸りながら、下着も全て脱ぎタオルを体に巻いて大浴場へ向かう冬子ちゃん。
私も急いで脱ぎ、冬子ちゃんの後を追った。
『まずは髪と体を洗って、それから髪とタオルがお湯に浸からないようにしてから湯船に入るんだよ。』
「うるさいわね、それぐらいあたしでも分かるわよっ……!」
こちらを睨み付けながら三つ編を解き、さっさと髪を洗おうとする。洗面器を2人分用意して私は冬子ちゃんの様子を見守った。
髪を濡らしてシャンプーを泡立てる。でもどうにも上手くいってないっぽい。
『ちょっと失礼。』
後ろに立って、頭を掴む。
「はぁっ?! な……何よアンタ! まさか殺す気じゃないでしょうねぇ?」
『そんなことしないよー。』
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