• テキストサイズ

君と私と(非)日常

第25章 魔法の子


『ありがとう、もういいよ。』
制止するとすぐに椅子に座りクタッと項垂れた。
「んあー、久し振りに魔力を出しきったぞ」
「お疲れ様です、夢野さん!」
機嫌良さげにニコニコしながら茶柱さんが夢野さんの隣の席に座った。
厨房にまだ居た面々も続々テーブルに着く。
「皆揃ったわね?」
東条さんが紅茶のセットを乗せたコンテナを押しながらテーブルの横に立つ。
「東条さんも座りなよ。メイドである前に女子なんだからさ、女子会らしく私達と一緒に食卓を囲もう」
赤松さんが東条さんの手を引き席へ誘導する。
「え……えぇ、そうね。でも待って、皆にお茶を注がないといけないわ」
「私達も手伝うよ」
「いいえ、座ってて。こうでもしないと私が落ち着けないの」
東条さんがメイドの本領を発揮したおかげで、女子会がワンランクアップした気分になる。
ようやく全員が席に着き、女子会発案者の赤松さんが軽く挨拶の言葉を述べ終わると皆一斉に菓子に手を伸ばした。
「どれも美味しいね!」
「神ってる出来映えに神様も満足してるよ~」
「なんか、さっき味見した時より美味しくなってる気がする……」
甘味を頬張り、皆幸せそうに舌鼓を打つ。
「んあー……ウチの魔法のおかげじゃな」
夢野さんがスプーンをくわえたまま自負する。
「へぇ、アンタも何かしたんだ」
春川さんがジト……ッとした視線を夢野さんに向けた。
作業中夢野さんがテーブルに突っ伏したままだったことは全員知っている。が、最後の準備の時の魔法はタイミングが悪かったのもあって見てない人も多い。
「夢野さんがですね、お菓子がより美味しくなる魔法をかけてくれたんですよ! 転子も手伝いました!」
ニコッと笑いながら茶柱さんが「おいしくなあれ」の仕草を再現した。
「ふふ……可愛いことをするのね、夢野さんったら」
クスリと笑い東条さんが夢野さんに微笑む。
釣られたように周りから微笑ましげな空気が溢れた。
「なっ……ほ、本当に魔法なんじゃからな! 今日こそは信じてもらうぞ!」
半分からかいが混じっている事に気付いて夢野さんが顔を赤くした。
「とにかく、今食べたのが味見した時よりも美味しかったのならっウチの魔法が効いている何よりもの証拠じゃ! 皆とくと食べよ!」
そう言い放ち、夢野さん自身も口いっぱいに菓子を詰め込む。
「元から美味かったとしても、何だか一味違う気がするな」
/ 203ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp