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君と私と(非)日常

第22章 旅へ行こうよ


「そりゃもう。汚したくなかった服を着ていたことを除けば、楽しい祭だったっすよ」
日曜日にイギリス観光に行ったらほとんどの店が休みだったこと。ノルウェーの森を散策している最中にお婆さんと出逢って一緒に木にお祈りしたこと。ベルギーで道に迷ったときに現地の人が声をかけて案内してくれて、そのまま2人で1日遊び回ったこと。
そんなことをたくさん話してくれた。
気が付けば昼休みもそろそろ終わりそうだ。

『……もうすぐチャイムが鳴るね。』
「あっという間っすね。教室に戻るっすか?」
『そうしようか。次の授業は学園祭の準備の時間だから楽しいと思うよ。』
「行事も旅行も、準備期間が一番楽しいっす。今まで参加出来なかった分も頑張るっすよ」

廊下を2人で歩きながら教室へ向かう。

「あ、希灯さん。放課後寄宿舎で会わねーっすか? お土産があるから渡したいっす」
『うん、いいよ。何をくれるのかな。』
「それは秘密っす。後でのお楽しみっすよ」

何だろう、気になるなぁ。天海くんがくれるものなら大体嬉しいから楽しみだ。
渡されるものを想像しながら時間が過ぎるのを待った。
そして放課後、男子用の寄宿舎に向かう。

『天海くん、来たよー。』
「どうもっす。上がって上がって」
『おじゃましまーす。』

天海くんはいっつも海外に行ってるからあんまり寄宿舎の部屋は使ってないみたいだ。
生活感の薄い居間に通される。

「何か飲むっすか? コーヒーと紅茶があるっすよ」
『あ、じゃあ紅茶で。』
「了解っす」

少しして天海くんがカップを2つ両手に持って出てきた。
私のはミルクティーで、天海くんはコーヒーのブラックらしい。

『ありがとう。いただきます。』

座って飲みながら2人でまた旅行の話を始めた。
話の種は尽きないし、飽きることもない。
話すことが、聞くことが、お互いに楽しいのだ。

「……あ、そうだ。お土産を渡すために呼んだのにすっかり忘れてたっす」

部屋に来てから1時間くらい経った頃、そう言って天海くんは旅行バッグの中からゴソゴソと包装紙に包まれた四角い物を取り出した。

「これあげるっす。個人的なお土産は今回希灯さんにしか用意してないんで皆にはナイショっすよ」

天海くんは口元に人差し指を立ててお土産を渡す。
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