第2章 2.
部屋に怒鳴り声が響く。
二人より年上らしい男だ。
どうやらかなりご立腹のようだ。
「なんで村長どもの合議制にした‼︎
なし崩しに全て握れたぞ‼︎
お前が王になれたのに‼︎」
それに対し、赤い男の声は静かに語る。
「俺(おい)は策術(しかけ)だのはよう知らん。
人の頭ん中で考えちょることはわからん」
その時、少年の声が彼の言葉を遮った。
「少しお待ちを」
少年が動いたらしく、足音がすぐそばまで近づく。
「…思い違いでなければ良いのですが、貴女は目を覚ましているのでは?
どうか、目を開き候へ」
二人分の息を呑む声が聞こえた。
これ以上の狸寝入りは出来ないと、彼女は目を開いた。
そこには、笑みをを湛えた美少年の顔があった。
「やはり、起きておられましたか。
気分はどうですか?」
「…ぼちぼち、です。
どうして、分かったんですか?」
少年は笑みを深くした。
「信の怒鳴り声に、少しだけ体が揺れたのが見えまして。
それで起きておられるのではないか、と」
確かに、先ほどの怒鳴り声に体が反応してしまっていた。
しかし、かなり抑えたはずなのにそれに気づくとは、目ざとい少年である。
痛む体を我慢しながら起き上ろうとすると、少年が傷に響かぬように起き上がらせてくれた。