第1章 ⒈
彼は絶句した。
囚われていたエルフの女の1人から、奥にもう1人いると聞いて扉を蹴破った。
そこには、四肢と首を枷で繋がれた傷だらけの女が、まるでボロ雑巾のように檻越しに横たわっていた。
床には血だまりが出来ており、長い間ひどい拷問を受けていたのがわかる。
彼女の顔には大きな傷があり、そこから血が流れている。
男の体が更に怒りに満ちる。
が、まずは彼女も開放しなければならない。
彼は刀を抜いた。
「ちっくと離れちょれ。
そん檻ば、斬り開いてくれる」
彼女は小さく頷くと、ひどくゆっくりとした動作で起き上がり、そして壁による。
それを見届けると、彼は思い切り刀を振り抜いた。
けたたましい音を立てて檻が壊れ、彼は女に駆け寄った。
後から入ってきたエルフが女にかけられた枷の鍵を開け、女の四肢は自由になる。
「気をしっかいしろよ。
すぐに手当てばさせる故、もうちっとの我慢じゃ」
女を抱き上げ、部屋から出る。
「シャラ、急ぎこん女(おなご)の手当てばしちゃれ。
女(おなご)の顔に、傷など作っものでは無(ね)」