第1章 ⒈
「俺(おい)が間違っちょった。
こん城ん奴ばら共は糞じゃ」
怒りに満ちた男の声が、真っ暗な闇の中まで響く。
「撫で切りぞ。
根切りぞ。
こん城ん兵どもは皆殺しじゃ」
訛りが強いものの、もはや懐かしく思える母国の言葉だった。
自分以外に、この世界に飛ばされた人がいた。
自分以外に、日本人がいた。
声と足跡の主たちは、兵士たちを捕らえ、女性たちを解放しているらしい。
兵士たちの抵抗する声と、女性たちの安堵からくる泣き声が聞こえてくる。
泣き声に混じって、女性の誰かが何かを喋ったのが聞こえた。
すぐに力強い足音が聞こえて、扉が蹴破られた。
突然光が視界いっぱいに広がり、思わず目を細めた。
光に目が慣れ顔を上げると、赤に身を包んだ男がいた。
彼は自分の姿を見て絶句していたが、すぐに腰に下げていた刀に手をかけた。
(刀…?)
「ちっくと離れちょれ。
そん檻ば斬り開いてくれる」