第5章 5.
「民の笑わん国は栄ん」
「じゃっどん、お前(まぁ)の…沙夜の笑みは好きじゃ」
「えっ」
「「え」」
信長と与一、そして沙夜は目を丸くして豊久を見る。
豊久は笑っていた。
ただ朗らかに、穏やかに、嬉しそうに笑っていた。
「然らば、よか!」
信長と与一はなぜか途中からニヤニヤしながら豊久を見ていたが、ふと沙夜を見てぎょっと顔を強張らせた。
豊久も沙夜の様子に気づいた途端に先ほどまでの堂々とした姿勢をどこへやったのかオロオロと焦る。
「ど、どげんしたか沙夜⁉︎
ないごてそげん泣いちょっのか⁉︎」
「え」
頬に触れると、水に濡れている。
沙夜は自分でも気づかぬうちに、泣いていた。
「あ、れ…?
なんで……?」
沙夜の視界が涙で大きく歪む。
目から大粒の涙がはらはらとこぼれる。
止めようとすればするほど、涙は止まらず、声も涙声に変わっていく。
「あ…ご、ごめん、なさい…
こんな…なんで……」