第4章 4.
「未来の日ノ本に興味がおありですか?」
それに真っ先に否と答えたのは、豊久だった。
「必要なか。
そがいな事(こつ)は聞かんでも分かっちょる。」
「島津は徳川(とくせん)家ば滅ぼした。
何十年、何百年かかったかは知らん。
じゃっどん、必ず島津兵子(へご)が滅ぼした」
沙夜は目を丸くする。
関ヶ原の戦いで負けたにもかかわらず、自軍の勝利を疑わないその信念。
沙夜には、豊久が眩しく見えた。
「俺は興味あるぞ!
俺はどんな風に後世に伝わっとるんだ?」
「私も少し興味があります」
二人からキラキラと期待の眼差しを向けられた沙夜は、苦笑すると目を閉じた。
そして深く息を吸いこんだ。
「南無八幡大菩薩、我が国の神明、日光の権現、宇都宮、那須の湯泉大明神(ゆぜんだいみょうじん)、願はくは、あの扇の真ん中射させてたばせたまへ。これを射損ずるものならば、弓切り折り白害して、人に二度(ふたたび)面(おもて)を向かふべからず。いま一度本国へ迎へんとおぼしめさば、この矢はづさせたまふな」
歌うような語り口に三人は息を飲んだ。