第3章 3.
「え、えっ⁉︎」
突然向けられた怒気にオルミーヌの顔は青ざめ、沙夜は驚きで目を丸くする。
「そがいな事(こつ)、言われんでも分かっちょる。
俺(わい)らは沙夜を戦わせる気はなか」
「貴女はこの傷を見ても何も思わぬのですか。
歩くことはおろか、起き上がることさえままならぬというのに」
「そもそも、調度品を見れば分かるわい。
沙夜のいた世界が戦のない時代だということはな」
信長は呆れたようにため息をついた。
沙夜は落胆したオルミーヌを見て、目を伏せた。
おそらく、今までこの世界に飛ばされてきた漂流者たちは、何かしらの形で戦えたのだろう。
しかし、自分は戦争のない時代から飛ばされた。
戦のいの字も知らない。
(私はどうしたらいいんだろう…)
どうしようもなく、情けなかった。
廃棄物とやらと戦うために飛ばされたというのに。
オルミーヌは漂流者ではないものの、戦えるらしい。
それに比べて自分は…。
豊久たち三人は、真っ白な廊下のような空間で男と会い、飛ばされたという。
自分もその男に会った。
新聞を読みながら、「次」とだけ言われ何も知らずに飛ばされた。
今の体では、誰かに助けられなければ起き上がることすら出来ない。
なぜ、戦えない自分が飛ばされたのだろう…。
結局、何もわからないまま時間は過ぎていった。