第3章 3.
時は少し遡り、代官城から女たちを連れて廃城へ戻った時。
信長は豊久と与一、そして廃城に残ったエルフを集めた。
「昼間、エルフの女どもと一緒に囚われていたあの女だが、漂流者の可能性が高い」
それも、俺たちと同じ国のな。
信長が告げると、エルフたちー特に女たちーがどよめく。
「女どもに聞きたい。
あやつはいつから囚われていた?」
女たちは顔を見合わせると、一人が代表して言った。
「少なくとも、一年前からいたと思います。
それより前には、あの部屋は使われていなかったから…」
「であるか」
信長は顎を撫でた。
「それと、あやつの顔の傷。
ありゃ恐らく消えんだろうな」
すると今度は豊久と与一が反応した。
といっても、二人とも眉を寄せただけで、何も言わなかったが。
「お前ら、あの女に鏡なんかの顔が映るようなものは絶対に与えるな。
俺たちの国、日ノ本の女にとって髪と顔は命と同然なのだ。
もし顔に傷が残っとると知ったら、何をするかわからんぞ」
エルフたちと豊久、与一は静かに頷いた。
そして夜は更けていく…。