第10章 〜10〜
「光秀、そんなにを虐めてやるな」
「そんなつもりは無い。俺はただ疑問に思ったことを聞いているまでだ」
「それはそうだが、にだって分からないことを聞いたって答えようがないだろ」
「それでも俺は自分の耳で確かめておきたい性分でな。気を悪くしたのなら謝る。」
「あ、そんな、大丈夫です。」
「ったく」
政宗はそう言いながら、お盆を光秀に手渡した。
「酒ばかり飲んでないで、少しは飯も食え光秀」
「ああ、美味そうだな」
そういうと光秀さんはお椀に全ての料理をまとめて混ぜ食べ始めた。
「え」
「、こいつはいつもそうなんだ。料理に興味がねぇんだ」
「嘘でしょ……勿体無い……」
「腹に入れば同じであろう」
「そうですけど……」
「?わからんな」
そういい、光秀さんは混ぜ合わさったご飯をつまみにお酒を飲んでいる。
そして三成くんと戦の布陣について議論しはじめた。
(この人……よく分かんない……)
私が思い抱いていた明智光秀のイメージとは随分違う。
信長の家臣、そこまでは同じだが、本能寺を襲撃したのは明智光秀じゃないのか……、でも今帰ってきたってことは…可能性はゼロじゃない……ってこと?
でもその可能性を考えてたら今ここに光秀さんがいるのっておかしいよね……みんな普通に接してるし……
などと、難しい事を考えていたのが顔に出ていたのか、政宗が私の頬を摘んだ。
「おい、宴の席でなに小難しい顔してやがる」
「い、いひゃい」
「ふ、間抜け面」
そう笑うと手を離してくれた。
「お前は考えが顔に出やすいな」
「え。嘘でしょ」
「なんか難しい事考えてたろ」
「う……うん」
「ここにいる限り、お前が悩む必要なんてない。俺が護ってやるから安心しとけ」
そう言い、優しく微笑むと政宗はつねった頬を優しく撫でた。
(……っ……そのセリフとその顔は……ずるい……)
「わかったか?」
「は、はい……」
不安な事はあるし、考えなければならない事も沢山ある。
でも、この人と一緒にいれば不安もどんな問題も全てどうにかなる気がした。
嬉しいが、でも少し恥ずかしくなって梅酒の入った盃をくいっと傾けた。
そうして楽しく宴の時間は過ぎていった。