第10章 〜10〜
「お前が信長様お気に入りの女子か」
「???どちら様でしょう?」
「ふ、明智光秀だ」
「明智……光秀……」
(そうだ……!)
どうして今の今まで忘れていたのか。
京都のガイドブックや跡地の石碑に書いてあった。
本能寺を焼いたのは、信長に自害を迫ったのは
誰でもない目の前の男だと。
「……と言ったな」
「は、はい(途端に緊張してきた……)」
「ふ、そんな畏まるな。楽しく酒を飲ませろ」
「は、はぁ」
私が気の抜けた返事をすると、政宗が光秀さんに話かけた。
「今帰ってきたのか?」
「ああ、本能寺での一件を聞いてな。」
「そうか、ご苦労」
「ああ。だがしかし驚いた。本能寺を襲撃しにかかるとはな。」
「ああ。が居なかったら信長様は死んでいた。」
「そうらしいな、俺からも礼を言うぞ」
「いえ、とんでもない……」
「何故だ?」
「え?」
「何故お前の様な小娘が本能寺にいた?」
「何故……と言われても……」
「はっきり答えられないということは、何か隠していることがあるのか?」
「いや、隠してることなんて無いですよ。本当に気がついたら本能寺に居たんです。自分の意思ではないので何故と聞かれても答えようがないんです……」
「ほぉ……だがしかし奇妙な話もあるものだな。人が時代を超えるなど」
「そ、そうですね……」
「何故時代を超えたのかもわからないのか?」
「は、はい……」
私がそう言って俯くと、政宗が助け舟を出してくれた。