第10章 〜10〜
「……なんか用」
「あの、今日ここまで来る途中に、薬を作ってくれてありがとうございました。」
「薬?様はどこか体調がお悪いのですか?」
「いや、あのね」
私が説明しようとすると、家康さんがそれを遮って言った。
「ただの二日酔いだって」
「二日酔い……ですか?」
「……うん。信長様に付き合って少し飲んだんだけど、身体に合わなかったみたいで……」
「それは大変でしたね、もう大丈夫なのですか?」
「うん。家康さんが薬くれたし、今はもう平気だよ」
「それは良かった。家康さんはやはりお優しいですね」
「はぁ?」
「ふふっ」
「あんた。何笑ってんの」
「ご、ごめんなさい……」
「全く……飲みすぎないように気をつけなよ」
「はい。本当にありがとうございました。」
「敬語」
「え?」
「敬語使わなくていい」
「……いいんですか?」
「政宗さんにも三成にも敬語じゃないのに、俺には敬語ってなんか腹立つ」
「腹立つ……わかった。家康さんにも敬語使わないね」
「さんもいらないから」
「……家康……?」
「それでいい」
そういうと、家康は少しだけ優しく笑った。
(今朝はすごい嫌われてると思ってたけど……そんなことないのかな……?)
そんなことを思っていると、話を聞いていた政宗が大声で笑い出した。
「ふははは。家康、お前も本当はと仲良くしたかったんだろ?素直になれよ」
「……違いますよ。俺にだけ敬語なのが嫌だっただけです」
そう言うとぷいっと顔を背けてしまった。
その仕草もなんだか可愛らしくて、まるで少し反抗期の弟が出来たみたいな気持ちになる。
「お前らは歳が近いからな。まあ、仲良くしろよ?」
「そうですね、様よろしくお願いしますね」
「うん。三成くんも家康も、よろしくね」
「……よろしく」
そう言うと家康は照れ隠しなのかぐいっと酒を飲み干した。
(今のは……デレだな……)
私はそう確信した。