第10章 〜10〜
「優鞠、今日からお前を専属の女中とする」
「え……?」
「聞こえなかったか」
「いえ!聞こえました。ですが……」
「なんだ、不満か?」
「と、とんでもない。ですが、私の様なまだまだ新人の女中より、もっと相応しい先輩方のほうが宜しいのではと……」
「ああ、そうかもしれん。」
「……では……」
「だが、もう、決めたことだ。」
「……はい」
「、気様も異論はないな?」
「はい、もちろん!」
「お前達は年頃も近い。この城内で女同士で歳の近いのはお前達位だ 。も、この時代に来たばかりで、周りを色んな女中が世話するより1人に絞った方が生活しやすいだろう。そうした配慮からの決定だ。」
「ふふ、嬉しいな」
私が秀吉さんの言葉にそう笑うと優鞠はちょっと顔を綻ばせながら言った。
「信長様、ありがとうございます。誠心誠意励まさせて頂きます」
「ああ。頼んだ」
その時、お珠さんが瓶を持ち帰ってきた。
「様、こちらをどうぞ」
「お珠さん、わざわざありがとうございます」
「ふふ、どういたしまして」
お珠さんはそう言うと、信長に軽く頭を下げ、家臣達の輪の中へと入っていった。
「これは……梅酒?」
「そうだ。これなら二日酔いもしないだろう」
「そうだといいけど……」
優鞠が私に梅酒を注いでくれた。
「頂きます……」
1口飲むと、口の中でふわっと梅の香りがし、さっぱりとした甘味が広がる。
「美味しいですこれ!こんな美味しい梅酒初めて……」
「そうか」
信長は笑いながら私を見た。
「それを持ってあいつらの所へ行ってこい」
「え?」
そう言われ、信長が顎で指した方を観ると、政宗と三成くんがこちらを見ていた。
「……じゃあ行ってきます……」
私はお酒を片手に二人の元へ向かった。