第10章 〜10〜
部屋に入った早々、優鞠が私に言った。
「さぁ、様。宴に向かう支度を始めましょう」
「うん、お願い」
そう言うと優鞠は私の髪を手ぬぐいで乾かし始めた。
(ドライヤーも無いんだもんねぇ……女性は大変だ……)
そんなことを考えながら、流れのままに目を瞑って居ると、優鞠の手が止まった。
目の前に置かれた鏡を見ると、私の髪の毛が見事に綺麗にまとめられていた。
「うわ。すごい。優鞠上手だね」
「そうですか?普通ですよ」
「私髪弄るの苦手だから……上手で羨ましいな」
「……ありがとうございます」
「ふふっ(照れてる。可愛い。)」
「……さぁ、化粧しますから、目を瞑ってください」
「はい。お願いします。」
優鞠にさっと化粧を施され、次は立ち上がって着物を着させられた。
「この着物……すごい綺麗……」
「信長様へ送られた一級品の着物と聞いております。」
「そんないい着物をなんて緊張するんだけど……」
「今日の宴は様の歓迎会でもございます。いい着物を着て無いと目立ちません」
「目立たなくていいんだけどな……」
「そんなこと仰らず。好意として受け取っておけばいいのです。」
「……はーい」
優鞠にそう諭され、渋々煌びやかな着物を着て迎えが来るのを待った。
なれない着物だが、思っていたほど窮屈では無かった。
着付けが上手いからなのかなと感心していると襖が開いた。