第10章 〜10〜
そしてふと、先程の優鞠の態度を思い出した。
(優鞠……秀吉さんのこと好きなのかな?表に出さないようにしてる感じに見えたけど……まあ、秀吉さんいい人そうだし……うーん。)
(だめだ……逆上せる前に……出よう)
そして湯船からあがり、手渡された手ぬぐいで体を拭き、置いてあった薄手の着物を羽織った。
(これ浴衣?帯とか分かんないけど……)
どうしようかと考えあぐねていると、外から優鞠の声がした。
「様、如何されましたか?」
「あ、この着物?の帯のやり方がわからなくて……」
「……中に入ってよろしいですか?」
「あ、うん」
そう言うと優鞠は湯浴み場に入ってきた。
そしてあっという間に手際良く帯を締めてくれた。
「ありがとう……」
「いえ。」
「着物なんて着たことないから……今度着付けとか教えてくれない?」
「構いませんが……」
「ありがとう」
そう言って私は優鞠に微笑んだ。
現代にいた時なら、数少ない友達の前でしか笑わなかった。
その友達の前でも心から笑ったことはほとんど無かった。
でも今、自分は心から笑えた気がしたのは、優鞠と仲良くなりたいからだ。
優鞠はあくまで仕事といった態度だが、私何故かこの子と仲良くなりたいとそう思っていた。
(戦国時代に来て心細いのかな……新しく友達作るなんて面倒だと思ってたけど、ここでは友達欲しいと思えるなんて。)
そんなことを思いつつ、優鞠と部屋に戻った。