第9章 〜9〜
「お2人はもう仲良しなのですね」
「は……?」
「あ、失礼いたしました。政宗様がそんなふうに女性の頭を撫でる事が珍しくてつい。」
彼はそう言うと、私にまっすぐ向き直して言った。
「自己紹介が遅れました。私、秀吉様の家臣で、今は織田軍の参謀を努めさせていただいております、石田三成と申します。以後お見知りおきを。」
そう言って彼は私に手を差し出した。
その手を恐る恐る握り返すと、顔をほころばせ笑った。
(……天使の微笑みとはまさにこのこと……かわいい……)
戦国武将に対してそんな失礼極まりない感想を頭に述べながら私は彼に聞いた。
「三成さんも政宗も……秀吉さんも家康さんもそうだけど、どうしてみんな安土城に集まっているの?」
素朴な疑問だった。
私の薄ぼんやりした歴史の記憶でも安土城に有名な戦国武将達が集まっていた等と習った記憶がなかったのだ。
すると三成さんは優しく微笑みながら教えてくれた。
「もうすぐ戦が起こる為です。信長様にお仕えしている各地の武将と家臣達がここに集まり、策を練り鍛錬を共にし意識を高めるためでございます。」
「い、戦?」
「ええ。遠からず起こるでしょう。信長様のお命を狙っている不届き者は少なくないですからね」
(戦って……まあ戦国時代だから……当たり前なのかもしれないけど……怖い時代に来ちゃったな……)
そう私が不安に駆られて少し下を向いた時、政宗が明るく言った。
「おい三成、城に到着して早々そんな話をしなくてもいいだろ?まずを休ませてやれ。」
「あ、そうでしたね。お疲れの所失礼いたしました。本能寺からの旅路お疲れ様でございます。お部屋へ案内する様、信長様から仰せつかってますのでご案内致します。」
「あ、ありがとうございます。」
(確かに戦は怖いけど、とりあえず今はゆっくり休みたい……)
そして政宗と別れ、私は三成さんの案内で城の中へと踏み入れた。