第8章 〜8〜
「そう言えば、色々お世話になってるのにあなたのお名前聞くのを忘れていました。教えて貰えますか?」
「私はお珠と申します。」
「お珠さん……」
「ええ。」
「信長様の所の女中さんとなって長いんですか?」
「そうですね、織田家には母の代から仕えておりまして。私がお仕えするようになってから10数年、と言ったところでしょうか」
「へぇ……結構長いんですね」
「えぇ。今いる女中の中では一番長いですかね」
「そうなんだ……。信長様に仕えるのは大変ですか?」
「ふふ、それはどういう意味で?」
「あ、いや、信長様ってわがままというか、自分が良ければそれでいいって感じが少ししたので……」
「確かに信長様は自分がしたいことは必ず達成する人です。でもそれはご自身のためだけではなく、家臣や私達女中、そして町の民のため。そう分かっているから私はお仕えし続けるのです。」
「信長様は慕われてるんですね……」
「必ずや天下統一なされるのは信長様だと思いますよ」
「……天下統一……」
「ええ。信長様はどんな出身の者でも、仕事は好きに選べる。身分の違いで差別を受けない。そんな世の中を作るために日々動いてらっしゃるのです。戦好きの無鉄砲な人に見えるかも知れませんが、必ず私達民の事を考えて下さっている。だから私たちも全力で信長様に仕えているのですよ」
そういうとお珠さんは凛とした顔で微笑んだ。
「様も、時期に分かるはずですよ。本当はお優しい方だと」
「そうですね……(だから私が未来から来たって信じてくれたのかな……)」
なんて事を話しているうちに、2時間程が過ぎ、休憩場所に着いたようで、前方の家臣達が思い思いに休憩し始めた。