第8章 〜8〜
「ふっ、そんな必死にならなくてもいい。」
「だって……(なんなの……?)」
「お前の腕の怪我に、あの時俺が気づいてやれなかったのが無念でな」
「は…?」
「あの時俺が怪我に気がついてれば、傷は残らなかったかもしれないだろ」
「……そうかもしれないけど……」
「謝るのは俺の方だ、すまなかったな」
そう申し訳なく苦笑いしながら、わたしの頭を優しく撫でた。
なんとなく、この人にそんな顔して欲しくないと思った自分に驚きながら私は言った。
「そんなに気に病まないで?本当に傷が残ることは気にしてないの。私が気にしてないんだから、政宗が気にすることないよ」
「それでも。俺の気が済まないんだ。本当にすまなかった。」
そう言い、政宗は頭を下げた。
(有名な戦国武将が……頭を下げてる……それも私に……)
ここでまた気にするなと言うのも酷だと思い、私は素直に気持ちを受け入れる事にした。
「うん……。わかった。でも大丈夫だから。政宗の気持ちもちゃんとわかったから。」
「おう。」
そう言うと政宗は明るく笑った。
その笑顔を見て何故か私はほっとした気がした。
「そう言えば、お前、仕事柄火傷に慣れてるみたいな事言ってたよな」
「あ、うん。私シェフだから最初はしょっちゅう火傷してたからさ」
「しぇふ?」
「うん……あ、料理人のこと。」
「お前料理人なのか」
「うん。好きなんだ。」
「俺も料理が趣味なんだ」
「へぇ!そうなんだ」
「あぁ、安土城でも暇があれば手料理を振舞ってる」
「へぇ……(あのガイドの『伊達政宗は料理好き』は、本当だったんだ……)」
「城に戻ったら、お前の料理を食わせてくれ」
「あ、うん。(イタリアンなんてわからないよね……和食も大体作れるからよかった……)」
何故か政宗といると、安心というか気兼ねなく話が出来る様な気がして心が楽だった。
(政宗はなんか話しやすいな。信長様は昨日話した雰囲気では偉い人だし、話をするのにも気を使うし……家康さんには嫌われてるし……あ、秀吉さんはまだ大丈夫かな。いい人そうだし……)
そんなたわいもない話をしていると、女中さん声をかけてきた。