第8章 〜8〜
「もう支度は済んだのか」
「……うん。荷物もほとんど無いし、着替えもないしね……」
「城に帰るまで我慢しろ。きっとお館様が着物なりなんなり準備させてるはずだ。」
「……ありがたいけど……申し訳ないな」
「なんでだ?」
「だって、いきなり現れて城に住まわせてもらう訳でしょ?着物も生活用品もタダな訳じゃないだろうし……」
「お前を手元に置いておくと決めたのはお館様だ。それにお前の着物1枚で食うに困る程、織田軍は貧乏じゃねえから安心しろ」
「うん……(そういう事じゃないんだけどな……)」
「あ、思い出した。」
「ん?何を?」
「、昨日俺に嘘ついたろ」
「えぇ?嘘なんてついてないよ」
突然そう言われたが、全く身に覚えがなかった。
すると政宗は私をじっと見て言葉を続けた。
「お前を本能寺から救護班へ運んでる時、お前が目覚めて、慌てて降ろせったの覚えてるか?」
「……覚えてるけど……?」
(なんか言ったっけ?)
「あの時お前、『どこも痛くないから早く降ろせ』って暴れたよな」
「……そんなこと言った……ね」
「その後川で会った時、家康に火傷の手当されてたよな?」
「あ……」
私的には、あの時本当に火傷は全く痛くなかったのだ。というより火傷していたことに気がついていなかったという方が正しい。
「別に嘘ついた訳じゃないよ?最初に政宗と話した時、火傷してるって知らなかったんだもん」
「これだけの火傷負っといてか?」
「うん……自分でも驚くけど、多分それどころじゃなかったんだと思う」
「ほぉーん」
「確かに結果的には嘘ついたことになるかもしれないけど、あの時はほんとに……」
なんでそんな事で追い詰められてるのか分からないが、政宗が真剣な顔で私を見つめてくるため、何故か私も必死に弁解しようとした。