第7章 〜7〜
「名前は聞いてないので分からないんですけど……『お困りのことがあったら私に手伝わせてくれ』って言ってきた人がいて。その人も長い棒を持ってて、その、棒の先に輪っか?が付いてて、しゃりんしゃりん鳴るやつ。あ。あと顔に大きなキズがありました……」
「……顔に傷だと?」
「おでこから頬まで斜めにキズが……それに、口調は優しかったけど、なんか雰囲気が殺伐としてて怖かった……」
「顔に傷、そして杓杖、信長様」
「顕如め、ついに行動を起こし始めたか」
「知ってる人なんですか?」
「知ってるも何も、信長様を撃とうと目論んでる野郎だ。坊主だなんて名乗ってはいるが、あんな極悪な坊主がいてたまるか」
政宗は少し苛立ちながら答えた。
「今更何を恐れて躊躇ったのか疑問だな。顕如が影で動き、俺様を討とうとしていることなどとうに知れている。」
「そうなんですか……(やっぱり天下統一するには敵もいるよね……)」
「お前に声を掛けたのは本能寺で顔を見られたと思って接触したのかもしれないな」
「え……(ってことはあの時もし本能寺で会った人だって思い出してたら……殺されてたかもしれないっていうの?……嘘でしょ……)」
秀吉さんの言葉に言いようの無い不安に襲われた。
ずっと死ぬのが怖くないとは思っていたはずなのに、いざその危機があったと思うと恐ろしく感じている自分がいた。
すると秀吉さんが私の頭を優しく、私の心を落ち着かせるように優しく撫でた。
「そんな青ざめなくても大丈夫だ。今日を失敗に終えたことで暫くは顕如も目立った行動は控えるだろう。それにお前が信長様の下にいればそう易々と手は出しにくくなるはずだ。」
そう言いながら秀吉さんは優しく笑った。
(この人……さっきから私の頭ばっかり撫でてるな……ちょっと落ち着いたから有難いけど……)
そんなことを考えていると、気付けば心は落ち着いていた。