第3章 〜3〜
その時、自分の左側の柱が倒れてきそうな事に気が付き、慌てて座り込んでいる男に駆け寄る。
(はぁ……はぁ……危なかった……。とりあえずこの人連れて逃げなきゃ!)
男の肩を叩いて声をかける。
「ちょっと、大丈夫ですか?生きてる?ねぇ!」
反応の無いことに焦りながら、力強く叩いて声をかけ続ける。
「ねぇ!ここにいたら焼け死んじゃうから!逃げなきゃ!ねぇってば!!!」
そこで男が顔を上げた。
「お前……何者だ……」
「……ッ!!!そんなの後でいいから!立てる?ほら、はやく立って!」
火事場の馬鹿力とは、まさにこの事だなぁと感心しつつ、男を無理やり立たせて自分の肩に担ぎあげ、歩き出す。
「女……俺を置いて逃げろ……」
「(はぁ?)無理!自分だけなら死んでもいいけど、流石に生きてる人を……ッ、見捨てて自分だけ逃げるなんて無理だからッ!絶対生きて外に出るんだからッ!」
力を振り絞りながら必死に歩いていく。
「ちょっと、出口どっち?分かんないんだけど!」
「フッ……突き当たりを右だ……階段を降りてまっすぐ行けば表に出る……」
「何笑ってんの……!腹立つな!ちょっとは自分で歩いてよ!」
「面白い女だ……フフッ」
「(この人頭おかしい……!!!)」
助けたことを後悔しながら、ここまで来てしまっては置いて逃げることも出来ず、息も絶え絶えに何とか出口まで歩いて行くと、外が見えてきた。