【ONE PIECE】アイサレたくない恋【サッチ】
第2章 Customer➤Family
「嫌いじゃない」
そう返せば、何か言いたそうな顔をしつつも、頷いただけだった。
「女の子はみーんな可愛いからなぁ」
「遊び人」
「レディーファーストって言え」
「そういう人はこんなことしない」
「そりゃそうだ」
それでも変えるつもりはないらしく、ため息を禁じ得ない。
が、歩く度に肩がお腹にくい込む形で鈍痛をかまし、酒場まで持たないと考えた。
おんぶがいいと言えば甘えん坊め、と笑われたがちゃんとしてくれたし、いつもより高い視界と暖かい背中に気分が良くなる。
「現金なお嬢ちゃんだ」
「おにーさんに言われたくない」
「おいおい、これからおにーさんは増えるんだからな、名前で呼んでくれよ」
「何で増えるの?」
「モビーディック号の奴らが全員家族だからだ。お前は末っ子な」
「家族…家族って"アイシテル"?」
「当たり前だろ?」
途端に怖くなった。
落ちないように首に回した腕が震え始めたのに気付き歩を止めたおにーさんが、近くのベンチへ私を膝に乗せて座る。
「…私"可愛い"?」
「ああ、"可愛い"よ」
「家族になったら、"アイサレル"?」
「ああ、"愛し"、"愛される"んだ」
突然泣き出した私を抱きしめることもなく、かといって突き放すわけでもなく、ただ妹にするようにずっと頭を撫でてくれた。
しばらくして泣き止んだのを見て、また歩き出して、真っ赤な目の私とおんぶするおにーさんを出迎えたマスターが即座に閉店とプレートを返す。
「ちと昔話をしようか」
そう言って話し始めたのはマスターで、現役時代の夢があった過去を語る。
「俺は昔、ゴール・D・ロジャーの船に乗っててなァ、あの頃は若かったから色んなことをしでかしちゃ怒られてたんだが、その度にあの人の大きさを知ったもんだ」
世界は広かった。
一歩踏み出してみれば、自分の持てる知識なんざこれっぽっちしかねぇんだって思える。
小さな自分が恥ずかしかった。
あの人は俺にもっと世界を知れ、と言った。
視野を広げるんだ、と。
「なァ、なまえ。迷ってるなら行っちまえ。そして俺が見れなかった世界を今度はお前が見てこい」