【ONE PIECE】アイサレたくない恋【サッチ】
第2章 Customer➤Family
自分をこの島に縛り付けるものは何かと考えた時、第一に浮かんだのがマスターで、さらに考えても何も浮かばなかったから、結局はそれに尽きた。
かといってすごい愛着があるわけでもなく、白ひげ海賊団に着いていきたいと言っても快く送り出してくれると思う。
いつだって私の意志を優先してくれた人だったから。
「俺の娘になれ、小娘。もっと広い世界を見せてやらァ」
「私、海賊知らない」
「これから知ればいいさ」
「全然戦えない」
「嘘つけ」
「お前は黙ってろ、サッチ。戦いたくないなら守られてりゃいい」
「守られてるだけなんて嫌」
「じゃあ強くなれ。強くなって何かを守れるようになれ」
何かを守る?
何かって何?
故郷を捨てた私には、親も、友人も、何も無いのに。
答えが見すからず俯いていたら、不意に浮遊感が身を襲い、何事かと取り敢えず受け身をとったが、いくら待っても衝撃はこなかった。
「つべこべ言わずに乗れ。あんまり口答えすんじゃねェ」
「膝の上に乗せても絆されません!私には、この船に乗る意味がないから、お断りします」
「意味なんざこれから作れ」
「無理、やだ、目的ないと頑張れない」
「甘ったれの駄々っ子か」
「いーもんそれで。帰るから降ろしてー」
むしろそれが好ましいのだ。
"アイサレル"のではなく"可愛がられる"のがいいんだから。
わかってもらわなくていいし、欲しくもない。
この島で、やがて一人で生きていくんだから。
「サッチ、一緒に行って荷物持ちして来い」
「了解」
「待ってよ、私乗らないってば!」
「そりゃお前の本心か?」
言葉に詰まった私を鼻で笑い、片手で掴みあげたと思えば、綺麗な弧をえがいて投げ飛ばし、次の瞬間にはおにーさんの腕の中にいた。
優しく笑って頭を撫でてくれたくせに、船長室を出る時には担ぐような体勢にされ、怖いのと恥ずかしいのでリーゼントを叩く。
どれだけ時間をかけてセットしてるのか知らないが、上下に大きく揺れた後また元に戻ったから、面白くてつい何度もやってしまい、三度目で怒られた。
「お転婆なお嬢ちゃんだな」
「おしとやかの間違いでしょ」
「んでもってかなりの甘えん坊だ」
「可愛いでしょ」
「…思ったんだが、お嬢ちゃんは可愛いって言われるのが好きなのか?」
ピクリとしたのを見逃さなかった。
