【ONE PIECE】アイサレたくない恋【サッチ】
第2章 Customer➤Family
ここ暫く、天運に見放されていたように思う。
買い出し、衣服店、雑貨屋、挙句の果てには花屋まで。
ストーカーかと疑ってしまうほどどこに行っても奴と出会い、付きまとわれ、酒屋で付き合わされる。
加えて数日目からは船に来ないかと誘いを受けるようになった。
覚えていたとは思ってもいなくて、理由を聞き返してしまったが、コックなのだと言われて思い出したほど。
「俺の料理はなんでも上手いんだぜ?」
「へぇ」
「おいおい、興味無さそうだなぁ」
「海賊の船に易易行くほど馬鹿じゃないし」
「心配すんなって!俺たちのとこは大丈夫だから」
一体何が大丈夫なのかわからない。
現に今だって四方を十数人に囲まれてしまっている。
絶対おにーさんのせいだ。
一緒に歩いていなければ巻き添いになんてくらわなかったに違いない。
「罰として得物を要求します」
「お嬢ちゃん戦えんの?ってか取られたら俺丸腰なんだけど」
「二本あるじゃん、一本貸ーしーてー」
二刀流なのに、と文句を言いつつも鞘ごと渡してくれた。
こういうさり気ない優しさは反則だと思う。
取り敢えず考えるのは後にして抜刀すると、背後に大きな気配がした。
「背中は任せたぜ」
「信用していいの?もしかしたらバサッて斬っちゃうかも」
「そんなんでやられるほど柔じゃねーよ」
「そっか、じゃあ、任せまーす!」
「任されまーす!」
久しぶりの運動は運動にならなかったけど、その余裕の中で曰く隊長さんの戦いぶりを見ることが出来たからよしとする。
なるほど確かに豪語するほどの腕前であった。
八割取られそうになって、頑張って三割取って、刀についた血を払い落とした時、頭が撫でられる感覚。
「お嬢ちゃん強いな」
「そうかなぁ、そんなことないと思う」
「謙遜出来るってことはまだまだ伸び代があるってことだ」
「これ以上必要ないよ、今回だっておにーさんのせいだし」
「じゃあ今の目付けられたかもな」
自分が狙われるのはまだいいけど、マスターに迷惑がかかるのは頂けない。
もし酒場に殴り込みにきたらどうしよう。
そう言えば、海賊が来ていた時はどうしていたんだろう。
ずっと自室にいるよう言われてきたから知らなかった。
「マスターは平気だよ、なんだって元海賊だからな」
それは今までで一番笑えない冗談だった。
