【ONE PIECE】アイサレたくない恋【サッチ】
第2章 Customer➤Family
名前だけは聞いたことがあった。
けれども全く関係の無い話で、酒場で働くと決まった時から海賊相手だと覚悟していたのに、過保護なマスターによってそれは無意味と化したのだ。
おにーさんはどうもそれを鼻にかけているようだけど、反応のしようがない。
わーすごーい手を叩く?
きゃーこわーい逃げる?
決めあぐねていると目前で手を振られ目を合わせる。
「気分悪いか?」
「大丈夫、それより隊長さんなんて、凄いんだね」
「だっろー?他にもな、隊長いるんだぜ。例えば…」
当たり障りのない返答は正解だったらしい。
あそのにいるのが何番隊隊長であそこにいるのが何番隊隊長で、と嬉嬉として説明を始めたおにーさん。
そんなに楽しいものなのだろうか。
「おいこら、あんまり無粋な知識を与えんでくれよ」
「…おっといけね、俺だけ話しちまった。別にいいじゃねぇか、白ひげ海賊団に興味持ってナースとして乗ってくれたりなんてしたらラッキーもんだし」
「こんな甘えん坊にナースなんて無理だろう」
そう笑い飛ばしたマスターにそれもそうだと同調したおにーさんの足をテーブルの下で割と強く蹴っておく。
突然唸り声を上げて蹲った彼に不思議そうな顔をする背中をカウンターまで押し戻し、一緒に仕事に戻った。
これ以上関わってはいけない気がした。
本能が警鐘をうち鳴らす。
身体がいつの間にか小刻みに震えていて、目敏いマスターは早くに上がらしてくれた。