【ONE PIECE】アイサレたくない恋【サッチ】
第4章 Unknown➤Known
もう一回、と催促されていつも通りの跳躍を脳裏に床を蹴るが、これもやはり先ほどと同じ結果に。
原因はどう考えても悪魔の実であるとしか考えられなくて、それを取り出すには死ぬしかないと言われた時は人生で最大に絶望した。
「わ、たし、もう、ふつー、に、なれ、ないの」
「落ち着け、ちゃんと力制御すれば大丈夫だから、な?」
「でも、このまま、だった、ら、どう、しっ」
「まずいな、過呼吸起こしてる。取り敢えず落ち着かせろ!」
「なまえ、なまえ、俺たちがいるだろ?安心しろって。ほら、一緒に呼吸して…吸って…吐いて…」
今いるのは誰の腕の中で、頭を撫でているのは誰なのか、そもそも声をかけたのは誰なのか、何一つわからないまま視界は暗転する。
暗くて、暗くて、なんにも見えない世界。
もしかして目を閉じてる?とか、目が見えなくなった?とか、そんな疑問は大きな波を作って襲いかかる。
あれ、そもそも私誰だっけ?
…なまえか、…故郷は?ここはどこ?
…捨てたんだっけ。どうして?家族は?友人は?
"愛"?
"アイ"?
何が駄目なんだっけ、何が嫌なんだっけ?
何が好きだったっけ?
わからない、わからナイ、ワカラナイ…。
ワカリタクナイ…。
途端に光がさす。
帰れってこと?
嫌だな、帰りたくないな。
帰りたくない?
どうして?
…ああ、"アイサレル"からだ。
じゃあ、どうすればいいんだっけ。
私は、何をすればいいんだっけ?
思考を放棄するのは難しいように見えて意外と簡単だ。
自分を取り巻くものは全て消えて、代わりに何も残らない。
でもどうしてか、身体に残った感覚は消えない。
…暖かさに、涙がこぼれた。