【ONE PIECE】アイサレたくない恋【サッチ】
第4章 Unknown➤Known
軽く水分を拭き取ったあと、隣に座ったサッチは穏やかな顔でこちらを見てくるけど、先ほどみたいな気まずさはなかったから食べ進める。
「うまいか?」
「世界一」
「はは、そりゃよかった」
「紅茶嬉しい。前言ったの、覚えててくれたんだね」
「あたぼーよ」
それはコックとしてなのか、はたまた…慌てて顔を振る。
以前いれてくれた紅茶はあまり好きではない種類で、遠慮なく言えと言われたから言葉通り遠慮なく伝えたわけだけど、まさかその時にポロリとこぼした細かい好みまで把握されているとは思わなかった。
だってこの船にはたくさんの人が乗っているのに。
ナースさんだって数え切れないほど。
「何か気に入らなかったか?」
「美味しい…幸せ」
いつしか、コックは食べた相手に喜んでもらえるのが一番の喜びだと言っていた。
素敵な仕事だね、と言えば驚いた顔をしていたけど、すぐにだろ?と笑ったあの顔が忘れられない。
ちょうど食べ終わって片付けようと席を立った時、船が大きく揺れて身体が後ろへ傾いた。
「なまえ!」
咄嗟にサッチが引き寄せてくれたから無事だったものの、床にはバラバラに砕け散った食器。
「ごめんなさい…割れちゃった」
「バカヤロウ、お前が無事ならいいんだよ」
「よくない!お皿はともかく、カップ高いんだよ!」
「えっ」
酒場で働いていた頃、食材の買い出しと一緒に食器の買い出もほぼ高頻度であったから、相場は大体把握してる。
島で違うと言えどもそこまで変わるとは思えないし、やはりどちらかと言えばカップは高価であるほうが多いと思う。
勿体無いことをしてしまったと後悔しているその隣で多いなため息が吐かれた。
「どうしたの」
「いや、なんかこう…ムード的なだなぁ…」
「ムード?」
「何やってんだよい!四番隊は担当だろうが!」
「…今行きまーす」
怒鳴りながら入ってきたマルコ隊長と入れ替わりで、頭を掻きながら食堂を出ていく後ろ姿を見送り首を傾げる。
ムードなんかあったっけ。
「どうしたんだよい?」
「いや、なんでも…あ!」
「あ?」
「お礼言い忘れた!マルコ隊長片付けお願い!」
だから残念そうだったのか、サッチらしくないと思いながらも得物片手に甲板へ走った。
背後から呼び止める声が聞こえたけど気にしない。
後で謝ろう。