【ONE PIECE】アイサレたくない恋【サッチ】
第4章 Unknown➤Known
大きく、風に吹かれて音を立てる、我が海賊団を象徴する海賊旗。
これは同業者や賞金稼ぎへの威嚇にもなり得るらしい。
規模とオヤジ、下に隊長さんたちの実力を恐れる者は多く、大抵は平穏な船旅なのでまだどこにも所属していない私は天国ナースセンターにいた。
もう一度言おう、天国である。
「おねーさーん」
「あらなまえ、もう、また来たのね」
「だって暇なんだもの、構ってー」
「ふふ、本当に可愛い末っ子だわ」
この船にはナースさんがたくさんいるから、誰かが仕事してても誰かが構ってくれる。
更に言えば色んな人が可愛がってくれるし、頭撫でてくれるし、お昼寝する時も一緒だし、膝枕もしてくれるし、思えば一日の大半をここで過ごしているような気もする。
配属が決まったらそうもいかなくなるのかと嫌な気もするけど、新入り下っ端の事務なんて大したものじゃないだろうと考えるのをやめた。
いつの間にか船内では甘えん坊と呼ばれていたが、それすらもこれ幸いと口実に使っている。
のを、この前サッチに苦笑された。
「おーい、入るぞ。なまえいるか?」
それからというもの、よくここへ来ては連れ出し、おやつを作ってくれるようになった。
「いますよここに」
「今日のおやつは口溶けガトーショコラだぞー」
「行く!おねーさんまたね」
「行ってらっしゃい」
この船に乗ってからあれこれと面倒をよく見てくれていたが、頭を撫でることが多くなった。
扱いに慣れられてる感じが少々腹立たしい。
嫌いじゃないので振りほどかないけど。
「馴染んできたか?」
「うん、おねーさん好き」
「お前な…少しは他も行けよ。喋りたがってる奴いるんだぜ」
「来ればいいのに」
「普通は用がない限り行かないんですー」
怪我人と同性以外には厳しいのか、と考えを巡らせたところで、視界の端をちらつくリーゼントが心なしか下を向いているような気がした。
「サッチ、寝坊した?」
「あ?よくわかったなぁ…二日酔いで頭ガンガンだよ」
「手合わせする?」
「…食べ終わったら少し付き合ってくれ」
こういう時は薬に頼るよりも、寝るよりも、体を動かす方がはやくよくなることを身に染みて知っているので、その辛さもよくわかる。