第2章 男花見
「・・・って総司が言ったら、近藤さんがすごいやる気になっちゃってさ、『おう、やろう!』って。そっから、すぐ近藤さんが土方さんに言ったらすぐ許してくれるんだぜ?不公平だよな」
「まぁ、土方さんも近藤さんには勝てないって言うことなのかな?」
二人はたくさんの料理をつめた重箱を風呂敷に包んで幹部の人たちが集まっている広間に向かった。
「お待たせしました」
「おお!千鶴ちゃん!待ってたぜ~!」
大きな重箱を抱えた千鶴が広間に入った途端、永倉は歓声を上げた。
その手に持っている重箱を持って、目を輝かせている。
「新八。お前、単純だな。料理が来た途端ガキみてぇに目ぇ、キラキラさせてよ」
「うるせえな、左之。千鶴ちゃんの手料理なんだぞ。これを喜ばずにいられるかってんだ」
「うるせえぞ!二人とも!ったく・・・、何でこの忙しい時に花見なんて・・・」
「土方さん、往生際が悪いですよ。近藤さんがいいって言ってくれたんですから」
悪態をつく土方に沖田は相変わらずの軽い調子で言う。
沖田の言葉に、土方は舌打ちをして言った。
「元はといえば、てめえが余計な事言うからじゃねえか!」
その時、広間に斎藤が入ってきた。
「皆、花見の場所の準備が出来た。行くぞ」
「斎藤さんが場所を取りに行ってくれたんですか?」
「あぁ、副長に頼まれてな。ちょうど良く近くの寺社の桜が綺麗に咲いていたから、話をしてきた。夕方までなら、いても良いそうだ」
「じゃあ、たくさん楽しめすね」
ふわりと笑う千鶴に斎藤はかすかに頬を染めた。
しかし、その二人に何の遠慮もなく沖田が話しかけた。
「一君。千鶴ちゃん。早く行くよ」
「あっ、はい!」
沖田は、斎藤の少し恨みのこもった視線を受け流して外にでるのだった・・・