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薄桜鬼-短編-

第1章 春空の桜雨


「名前はなんてんだ?
名乗らず殺り合うのもなんだろ?
俺は原田左之助、幕府の人間だ
犬って言う奴もたまにいるけどな

此方は名乗ったぞ?
そっちも名乗れ」

左之助は警戒しながら言う

『“そっちも名乗れ”?
勝手に名乗ったのはお前だろ?
僕は関係ない
というか、幕府の犬には名前があったのか?』
羅刹は悪どい笑みを浮かべ左之助を見下す

左之助は羅刹の言葉に怒りを露にした
「人間だ
名前があるのは当然だろ…
馬鹿にしてんのか?」

『馬鹿にしてる?
馬鹿にしてるのはアンタだろ!?
人間だから名前があるとは限らない!
名前があることが当然なんて、誰が決めた!?
幕府の奴が治安維持できないから名前が無いんだよ!!?
だから幕府の人間に、治安維持出来ないくせして上に立つ人間に、名前なんて必要無いんだよ!!』
羅刹は狂ったかのように叫ぶ

左之助は羅刹の言葉に胸が痛んだ
(この子は被害者なんだ)

そう思った、わかった途端に、左之助は刀を下ろした

羅刹は 馬鹿にされている、舐められている そう思った

僕の人生を馬鹿にしてる!
だから斬りかかった

左之助は羅刹の刀を片手で受け止め、羅刹を抱きしめた
「助けられなくて、すまぬぇ」

僕は初めて涙を流した
溢れ流れる涙を、どうする事も出来なかった

左之助は羅刹をギュッと抱きしめて呟いた


「“―――”」


僕は声をあげて泣いた

それは春空の桜雨の日だった










“お前の名前は…千鶴…だ”



僕を助けてくれたのは、名前をくれたのは アナタでした


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