【黒子のバスケ】それはいっそ悪夢のよう【緑間真太郎】
第4章 1度目は僅かな希望に縋り
『ありがとな…えっと、お前はキセキの世代の…』
「緑間真太郎なのだよ」
クラスまでの道程を要と一緒に向かう
前の時の自分だったら考えられない事だろう
高尾不在で喧嘩も無しに2人でいるなんて出来なかったからだ
別に8月25日を回避するれば良いだけなので前以上に親しくする必要は無い
どうせクラスも部活も同じなのだ。嫌でも一緒にいる時間が多くなる
しかし前回の反省点はあの日、宮地さんが止めるまで喧嘩をし罰として買い出しに行かされた事だ
だから今回は出来るだけ…喧嘩をせず且つ友好な関係を築く
それが人事を尽くすという事なのだよ
『マジか!!私も中学時代バスケしてたんだ!なぁ今度1対1してくれよ』
「……別に良いが、足は大丈夫なのか?」
…あっ
そこまで言ってはたと気づく
『えっ…?なんで知って』
…しまった…何も考えず返事してしまったが、この情報は前の時は高尾から聞いたものだった
墓穴を掘ってしまったのだよ…
案の定要は不思議そうにきょとんとした表情で俺を見上げている
「…お前は中学時代有名だったであろう?」
だが苦し紛れに俺がそう言うと、その答えに納得したのか要はああ…と小さく呟いた
まぁ、こいつが中学時代女バス界で有名だったのは本当だ
足の事だって知っている奴は知っている
彼女もそう思ったのだろう
『少しだけなら大丈夫なんだ!まさかキセキの世代の緑間クンが私の事知ってるなんて思わなかった!なんか恥ずかしいな』
へへへと照れたように笑う要
「べ…別に知ったのはたまたまなのだよ。中学時代特に女バスまで注目してなかったからな」
…くそ…また悪い癖が出た
確かに中学時代特に女バスには関心を持っていなかったがそれを伝える必要はなかったのだよ
短絡的で激情型の要の事だ馬鹿にされたと思い、突っかかってくるであろう
めんどくさい事になったと内心これからの事を憂鬱に思っていると
『そーだよな』
要は少し困ったような悲しそうな複雑な笑みを浮かべただけだった
その表情の理由の心当たりが全く思い付かない俺は、意外と彼女の事を何も知らないのだと思い知らされた