【黒子のバスケ】それはいっそ悪夢のよう【緑間真太郎】
第4章 1度目は僅かな希望に縋り
「はっ…?」
夢から覚醒するかのような意識が引っ張られる感覚に陥り目をゆっくり開くと、広がった視界は先程見ていたソレとは違っていた
「どうしたんだ?真太郎」
「あ…赤司?」
聞き覚えのある声に呼ばれそちらに顔を向けると、今はバラバラな学校に通っている元チームメイト達が不思議そうな表情で俺を見ていた
何故お前達がここにいるのだよ…
特に赤司、紫原は京都と秋田で易々東京には来れないはず
しかしそこで俺はある違和感に気付く
彼らは何故か卒業した筈の帝光の制服を身に纏っていた事
ここは先程いた場所ではなく帝光の体育館である事
そしてこの場面…既視感を覚えるのだよ
数ヶ月前に俺…俺達はこうして制服で顔を合わせている
そこで、改めて下を向き自身の様子も確認した
帝光の制服…
俺の脳裏にある仮説がたった
誠に信じ難いがもしかしたら俺は逆行してしまったのではないか…
先程までの記憶を巡らせる…確か俺はバスケ部スタメンで要の葬式に参列していた
泣きじゃくる高尾を宮地さんや大坪さんが必死で慰めている中
俺はただぼんやりと要の遺影を眺めていたはずだ
「…何でも無いのだよ」
とりあえず今は落ち着いて考えなければ
赤司達に悟られてはいけない
俺がそう答えれば赤司は俺から俺たち全員に視線を移した
「これからはお互い敵同士だ。次は高校の全国舞台で会おう…」
それから赤司が話し始めた内容はやはり1度耳にした事のあるものだった
◇
体育館を出て空を見上げる
赤司達の様子からして前の記憶があるのは俺だけみたいだ
高尾や先輩達はどうか分からないが恐らく記憶は無いだろう
しかしこれは未来をやり直すチャンスではないか?
まだこの目で確かめていないがココ”では要は生きている
だとしたら記憶のある俺が8月25日をもう1度やり直せば
要は俺の身代わりに死ぬ事は無い
むしろあの事故さえも回避できる
あの事故からモノクロになってしまった俺の世界に色が戻ってきた気がした
要
お前が救ってくれた俺の残りの人生
次はお前に尽くす
「人事を尽くすのだよ」
お前は俺が守ってやる