第4章 日向と日陰
でも、いくら待っても
どんなにいい子で待っててもお母さんは家に帰ってこなかった
「お父ーさん!」
「京治か…どうしたんだ?」
お父さんはひどく疲れた顔をしている
それでも笑顔をわざと作って口角だけは上がっている
「来週、授業参観日があるんだ!お父さん見に来てよ」
小学校の授業参観。
普通の家庭なら親は最低でも一回は見に行く行事だ
俺はヤクザの家庭だから行きたくても学校側に拒否されてしまう
今度の参観日は小学校最後の参観日だから来て欲しかった
「行けたら行くよ」
「ほんとに?」
「ああ。ほら、今日はもう遅いんだから寝なさい」
「はーい。おやすみなさい」
「おやすみ」
お父さんの部屋から出て1人廊下に立ち尽くす
最近、俺たちの組が危険な目にあっていると盗み聞きした。
だから参観日なんて言ってる場合じゃないだろうけど…
俺は我儘だから無理を言わせてしまう
さっきだってすごくやつれた顔をしていた
寝てないんだろう
もう考えるのはやめよう。
自分の部屋に戻ろうと足を動かす
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「〜〜〜?!〜〜〜〜〜〜〜!」
誰の声だ…?
幹部たちの部屋からだ…
そっとドアに耳を当てて神経を研ぎ澄ませる。