第2章 With Ray(レイ)
「俺はここで待ちます、ヨナさん。」
途中、草むらで突然足を止めたエドガーが言う。それに、不審そうに振り返ったヨナが尋ねた。
「.....何さ、ビビったの?」
「違いますよ。気をつかってるんじゃないですか。アリスの最期の時をそんなにすぐに終わらせてもいいんですか?」
意味がわからないヨナはますます怪訝そうに眉をひそめる。
「....アリスの為にも、辛くないように怖くないように、素早く天国に送ってあげた方がいいでしょ。」
「これで本当にもう会えなくなるんですよ?何か特別なことはしたくないんですか?......愛してるんでしょ?」
エドガーの言葉に、ヨナはバッと顔が熱くなった。
「な、なに言ってんの!?」
「あんまりここで立往生すると、黒の兵に見つかるリスクが高まります。ヨナさん、早く行ってください。」
ようやくエドガーの意図を組んで戸惑うヨナに、エドガーが促すと、ヨナはたじろぎながら歩を進めた。
そして、照れたように言い捨てる。
「人に気を使うなんてお前らしくないけど、今回だけはお礼を言ってあげるよ。...ありがとう。」
そう言って、足早に黒の兵舎に侵入して行くヨナの背中が小さくなるのを、眩しそうに目を細めてエドガーは見送った。
「....全く、失礼な上司ですね。........アリスと楽しい最期のひと時を、ヨナさん。」
そしてクスリと笑って独りごちた。