第2章 With Ray(レイ)
全力で照れるレイに、フェンリルはふと表情を真剣にした。
「......そんな好きなのに、ヨナに渡しちまっていいのかよ?」
「.......異論、あるんじゃん。」
顔を隠したまま、レイが突っ込むと、フェンリルは軽く頭を振った。
「いや、異論じゃねーよ。相棒が黒のキングとして下した判断に、文句はねー。寧ろ妥当だと思ってるくらいだ。」
「......」
「まぁ、あの性悪美人は、俺らには厄介だけど、少なくともアリスには優しいみたいだしな。」
「......」
「俺が言いたいのは、黒のキングとしてじゃなくて、相棒は、それでいいのかってことだよ。」
「...フェンリル、お前はホント優しいのな。」
顔を隠していた手を退けたレイの顔には、僅かな笑みが湛えられていた。
「相棒...?」
「いいんだよ。これで。俺がもう決めたことだから。」
そのレイの顔を見て、フェンリルは心の底から安心した。