第4章 With Luca(ルカ)
至近距離に迫る、セスの整った顔に、目のやり場に困ったアリスが尋ねる。
「あの…セスさん?」
「何?」
いつの間にか、アリスの腰に回された腕が、アリスの逃げ場を奪う。
「この…体勢は…」
「あら、アリスちゃんは可愛いんだから、」
真っ赤になって言うアリスに、陽気に答えたセスはクスクス笑った。
「いくらケーキが美味しくたって、もう少し、お上品に食べるといいかもしれないわ。」
そしてセスは、アリスの口の端についたケーキを拭って、舐めた。
(セス…‼︎)
思わず声が出そうになったルカは、なんとか気合いで我慢した。胸が締め付けられる。
アリスのそれに対する反応を見れば、余計にだ。アリスは、今や、耳まで真っ赤だ。
ルカとアリスのそわつく気持ちをよそに、セスは、俯くアリスを、余裕そうに覗き込んで言った。
「あらー? いけない子ね。」
「え…?」
「もう他に男がいるのに、俺にこんなにドキドキしてもいいのか?」
甲高いオネエ声を封印したセスが、低い男の声で囁いた。
セスの『お手本』の意味を、完全に理解したルカは、拳をいつの間にか握りしめていた。