第4章 With Luca(ルカ)
セスと談笑するアリスは、そのまま、セスの訪問の理由を聞きそびれたまま、勧められたケーキを、おずおずと口に運んだ。
「美味しい…」
「でしょー?アタシの自信作だもの⭐︎」
ルカの作ったケーキを一口食べた瞬間、アリスの顔に広がる笑顔を見て、ルカの胸がキュンと締め付けられた。くすぐったい気持ちに駆られ、離れた場所で、一人でルカははにかむ。
紅茶をゴクと飲んだアリスが、上目遣いに尋ねた。
「セ…セスさん?」
「何かしら?」
「あの…わざわざ、このケーキを私に食べてもらうためにここに?」
「そうよー⭐︎アタシの自信作を、アリスちゃんに一番に、味見して欲しかったから!…でも」
セスが、アリスとの距離をぐいと縮め、指で顎をクイと持ち上げた。
セスの突然の行動に、アリスのみならず、ルカもドクンと心臓が跳ねた。
「…他に理由がないと、いけなかったかしら?」
「セ…スさん?」
一際、声を低くし囁いたセスに、アリスの視線は捕らわれてしまう。
ドアの隙間から覗くルカは、それを内心モヤモヤした気持ちで眺めていた。
(なんだ…この気持ち。)
セスが見せようとしている『お手本』に、徐々に嫌な感じを、ルカは覚えていた。