第4章 With Luca(ルカ)
結局、セスが騒いだだけで、何もなかったという事実に、レイは肩をすくめてみせた。
「何だったんだろうね?」
「さあ?」
尋ねたアリスの顎を、レイがクイッと持ち上げた。
「レイ⁉︎」
「さっきの続き」
真っ赤になったアリスの口にレイが顔を近づける。今度こそ、と思ってルカが顔を逸らすと同時に、レイとアリスの背後から大人びた声がした。
「はいはい、そこまで。食事の時間だ。」
両手に料理の皿を持ったシリウスが現れて、再びレイのキスは阻害された。
「....おっさんはタイミング悪すぎ。」
「クソガキは盛ってねーで食事しろ。」
レイとアリスの間に割って入ったシリウスは、二人の前にゴトッととシーフードのサラダを置いた。レイは不機嫌そうにシリウスを見上げている。
(シリウス…?)
シリウスのナイスタイミングな登場に、ルカが目をパチクリさせると、シリウスがウインクで答えた。
それを見た、ルカの隣に座るセスが、ルカを肘で突いた。
「良かったわね、シリウスはルカの味方みたいよ。フェンリルはレイの味方でしょーけど。」
「…セスはどっちなの?」
「アタシ?アタシはアリスちゃんさえ幸せだったら、どっちでもいいわっ⭐︎」
そう言って、セスが仲睦まじげに食事するレイとアリスの方を見遣った。
「当の本人達は、何にもわかってなさそうね。」
目を細めてセスが呟く。レイの隣に座るアリスはとても幸せそうに見える。
アリスの笑い声が聞こえて、ルカは胸が重たくなるのを感じた。