第4章 With Luca(ルカ)
セスが反射的に上げた声に、談話室が静まり返る。
視線が自分に集まったことがわかったセスは、ハッとしたような顔をして言った。
「え、えっと......ほらあそこに!」
咄嗟に、セスは天井の方を指差した。
「.......何もねぇけど?」
「さ、さっき蜘蛛がいたのよ!」
セスの指先を目で追ったレイが、ポカンとして呟くと、セスはなんとか言葉を紡いだ。
(セス......?)
らしくないセスの行動に、隣で座っていたルカが、そちらを見上げて考えた。
「蜘蛛ぐらいで騒ぐなよなー。」
「虫は乙女の敵なのよっ!」
やや不満げに言うフェンリルに、セスが素で応対していた。
(ああ成る程.....)
ルカの視線に気が付いたセスが、一瞬目配せすると、ルカの口元が緩んだ。
(俺のために、わざわざレイがアリスにキスしようとするの、止めてくれたんだ。)
(ありがとう....)