第3章 With Jonah(ヨナ) Act2
「え、あ、ああ…!」
ようやく、何のことか心当たりを感じたらしいアリスが答えると、ヨナはムッとしたように怪訝な顔をした。
「…何?忘れてたの?自分の言葉には責任持ちなよっていつも言ってるでしょ。」
「ゴメン…。でもヨナ、そんな私のちょっとした言葉まで覚えてくれてるの?」
何処か嬉しそうに、上目遣いでヨナを見つめるアリスに、思わず胸が高まるのを感じてヨナは必死に否定した。
「あ、相変わらず勘違いも甚だしいね、君は…っ俺はただ」
「ありがとう。」
ヨナの言葉を遮って、ふわりと笑ったアリスにヨナの心は奪われて、そのまま怒りの思考も停止してしまう。
「…幸せ者だなー、ヨナ。」
眠たそうな気だるそうな声が、少し離れた場所からして、アリスとヨナが同時にそちらを見ると、顔を赤くしたカイルがグラスを片手にニヤニヤしながら二人を見ていた。隣にエドガーもいる。
「な、何見てるのさっ!」
「バカップルっていうのはこういうのを言うんでしょうね。はい、お二人の好物。」
カイルよりも真っ赤になって言うヨナに、小皿に分けられたミルフィーユをエドガーが二人に手渡した。
渡されたミルフィーユを見て、ヨナが僅かに顔を顰める。
「…何これ。イチゴがのってないじゃないか。美意識に反するよ。」
「そうですね。でも、物事は案外、見た目ではないのかもしれません。」
意味深に呟いたエドガーに、ヨナが顔を上げる。