第3章 With Jonah(ヨナ) Act2
ヨナ、エドガー、カイルの三人が馬車を降りて、ブランの可愛らしい小さな家のドアを開けると、いきなりすごい光景が目に飛び込んできた。
ドレスを着たアリスの目の前に、ブランがひざまづいて、手の甲に口付けている最中であった。
状況の把握に2、3秒かかったヨナだったが、みるみるうちにその整った顔は赤み帯び、女たらしの白ウサギに向かって怒鳴りつけた。
「わぁわぁ! 俺のアリスに何してんだよ、バカウサギ!!」
「! お早いですね。もうドレスアップは出来ましたよ。」
ヨナたちが玄関に立っていることに気がついたブランは、何事もなかったかのように、先ほどまでしていた行為を中断して三人に歩み寄る。
「このスケコマシっ、俺のアリスに何してたんだよっ!」
「何って…、ドレスを着たアリスがあまりに綺麗で眩しいから、心を奪われてしまったんだよ。」
ブランの口からさらさらと出る歯の浮くようなセリフに、ヨナはたじろいだ。念のため、アリスが今の言葉に絆されてはいないかとヨナが目をやると、恥ずかしそうに俯いている。
ヨナはその様子に一瞬不安になって、ふとエドガーとカイルの方に目をやると、二人とも”ファイト”というように拳を小さくあげた。
少し励まされたヨナはキッとブランを睨み返して、今度は語気を強めて言う。
「アリスは俺の女なんだから、俺の許可なく手を出すな。」
「いくら君のものだからといって、こんなに綺麗な女性を紳士として放っておくわけにはいかないだろう?ほら、君にミルフィーユが必要不可欠なように、僕にもアリスのように甘美で蕩けるような砂糖菓子が必要なんだよ。」
ヨナは完敗したようにその場に硬直する。背後でエドガーとカイルが笑いを堪えていることがわかったが、後でお仕置きだ。
「とっ、とにかく、アリスは俺とダンスパーティーに行くんだからそこどいてよねっ!」
ヨナは荒々しくブランとアリスの間に割って入ると、アリスの手を取り強引にドアの方に歩き出す。