第2章 With Ray(レイ)
「ごめんね、ヨナ。」
「!」
ヨナの方は振り返らずに、いや振り返れずに、アリスはレイの胸に飛び込んだ。
レイは意外だったのか、しばらくアリスを胸の中に置いたまま、抱きしめ返さなかったが、アリスが不安げに見上げると、優しく笑ってギュッと抱きしめた。
「レイ…あのね、私…」
「バーカ。遅ぇんだよ。」
それ以上言わなくてもいい、とばかりにレイがアリスの額を指で弾いた。
どうしてか、涙が出る。何に対しての涙だろう。迷惑かけてごめん、怖かった、早く言いたかった、いろいろあるけど、アリスは堰を切ったようにレイの腕の中で泣き出した。
レイは何も言わずに、アリスの頭を優しく撫でた。
ひと段落ついた今の状況に、一旦幕を下ろそうと、シリウスが立ち上がって言った。
「ヨナ、今回のことはうちとしては不問にする。アリスを守ってくれたことに免じてな。」
「…守った?最後、俺は殺そうとしてたんだよ?」
自嘲気味に吐き捨てたヨナに、シリウスが微笑んだ。
「…でも、結局殺さなかった。その後も、アリスがお前に体当たりした時にだってチャンスはあったろ?」
「…っ! 最高の腰抜けって言いたいのか?」
悔しそうに絞り出したヨナは、エドガーの亡骸を抱き上げた。