第2章 With Ray(レイ)
「レイッ!」
「…っ」
立っていることすら困難になったレイが、膝から崩れ落ちる。
自分が殺されそうになっている時にも他人の心配か…
レイの口元には、呆れたような、降参したような笑みが浮かんだ。
アリスがレイを気遣う様子を見て、不機嫌そうに眉を顰めたヨナも、レイと同じことを考えていた。
「…君はこんな時にも他人の心配?」
「ヨ、ヨナ…お願いっ…レイが大変なのっ」
「君の方が大変だけどね。まぁ、俺は君のそういう、甘っちょろくてお人好しなところも好きだけど…」
アリスの顔だけをぐっと自分の方に向かせたヨナは、その瞳を真っ直ぐ見つめながら、サーベルの切っ先でアリスの皮膚の薄いところを刺した。
「…っ」
鋭い痛みと共に、真っ赤な鮮血がアリスのブラウスを汚す。
「…やめろっ!」
「…貫く時は一気にするから、多分長くても15秒くらいで逝けるよ。本当は、君を眠らせてから、魔法石で痛くないように逝かせてあげるつもりだったんだけど…。」
レイが遠くから叫ぶものの、ヨナはそれを無視する。ようやく、自分が殺されるのだと、青ざめ身を震わせ始めたアリスを、ヨナはあやすように話しかけた。
「ヨ、ヨナ…私…っ」
「大丈夫。俺がついてるから。」
サーベルをキラリと光らせて、ヨナはそれを垂直にアリスの心臓に当てた。
「さぁ、逝くよ。」
「させるかっ!」
銃声と共に声が響いて、ヨナのサーベルが吹っ飛ばされた。