第5章 親友
その日のお昼休み
私と森川さんは学園のカフェテリアにいた。
いつも通りにお手伝いの智子さんが作ってくれたお弁当を持って屋上に行こうと席を立ったとき
「せっかくだから一緒にお昼食べましょう」と森川さんが声をかけてきた。
特に断る理由も見つからなかったし、私となぜ友達になりたいか聞きたかったので、ふたつ返事で
「いいですわよ」と返した。
森川さんがカフェテラスでお昼を注文して席について先に口を開いたのは森川さんの方だった。
「桜ちゃんはいつも屋上でお昼を食べていられるみたいだけど、どうして?」
「屋上にいるときが一番楽だから」
ほとんどの人はお弁当なんて持ってこないからカフェテラスで食事をしていたため、お昼に屋上に来る人なんていなかった。
お父様とお母様がなくなってから、家の中は暗い雰囲気だし、お兄様は仕事であまり会えないし、前みたいに友達と深く関わらなくなったし、いつからか1人でいる時間の方が楽になっていた。
みんな上辺だけの付き合いで、そんな相手と仲良くなりたい気持ちにはならないとか、そんな過去を森川さんは巧みに私から聞き出していった。