第20章 研案塔にて
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「繋さん!十夜くん!!」
療師さんについて研案塔へ行くと、そこには繋さんと十夜くんがいた。
「よぉ。」
「久しぶりね、松岡ちゃん。」
「お久しぶりです!どうしてここに?」
嬉しくて駆け寄ると、優しく包まれた。
(繋さん…。)
お互い顔は見えないけど、熱と心臓の音はしっかりと伝わってくる。
「…ありがとう。」
「……」
(えへへ…なんだかくすぐったいな…。)
助かったというのは聞いてたけど、実際に会ってみるのとは違う。
凄く、安心出来た。
「…髪、切ったんですね。」
少し離れてから見てみると、長かった茶色の髪が肩に少し当たるくらいまでに短くなっていた。
「ええ、気分転換にね。どうかしら?」
「とっても似合ってますよ!ね、十夜くん?」
「…普通だよ。」
相変わらず照れ屋な十夜くん。
でも前とはどこか違って…疲れた感じが無くなったみたい。
(よかった…。)
色々と、いい方向に進んだようで本当によかった。
そう思うと自然と顔がほころんだ。
「…でもま、お前にはホントに感謝してる。
…ありがとな。」
「いやいや、私は何もしてないし…。」
「そんなことないわ。私の命の恩人ですもの。
ありがとうございます。」
「そんなに改まらないで下さいよ…ホントに私は…」
「そうだな、お前は何もしていない。」
(え…?)
突然聞こえた低い声に振り返ると、白衣を着た長身の男性が。
(あ…この人確か…)
見覚えのあるその人は、私のことは見ず、何か資料を見ながら黙々と続けた。
「しいて言うなら私の仕事を増やした、か?」
「な…」
かき上げたピンクの髪を見て、ようやく思いだした。
「ぁ…燭、先生…?」
(だったっけ…?)
会ったのは2度程だし、それも随分前のことだからすっかり忘れていた。
疑問系だったのが気に入らなかったのか、燭先生は目を細めて私を見下ろした。
「まさか私のことを忘れていたのか?」
「い、いえ!まさかそんな…!!」
慌てて首を横に振ると、フンと鼻であしらわれた。